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2006-08-20 18:13:00

『東奥日報』 きょうを読む~あすを考える (2006年8月20日)

 

「世界最北限のお茶の木がある県は?」

「国産牛最高格付けの牛肉を唯一出した県は?」

「日本最古のそばが存在した県は?」

 いずれの答えも青森県である。以前私がパーソナリティを勤めていた青森の世界一を見つけるというラジオ番組で、食材のみならず文化や観光などの資源も含めて何と百を超える青森の世界一を紹介するに至った。
 青森県と言えばリンゴ、にんにくなどが生産量の日本一ですでに知られているが、量だけではなく質まで含めると実に多くの日本一、世界一が青森県には存在しているのである。私が約五年前青森で飲食事業を始めたきっかけは、こうした青森の隠れた宝物を発掘できないかということであった。
 地産地消とは、その地域でとれたものをその地域で消費するということであるが、私はこの間に地加を入れ、その地域で何か付加価値を加える、地産地加地消を提案している。地産地消のメリットは生産者の顔が見えるため安全、安心で、長距離を輸送しないので環境にやさしく、地域でお金が還流するため地域経済の活性化につながるというものだ。
 しかし地域の食材が輸入食材に比べて競争力を持たなければ、このすばらしい概念は、絵に描いたもちになってしまう。だから北海道でも同様に役所が旗を振って地産地消の推進をかかげてはいるが、現実的にはなかなか進んでいない。

 観光地で有名な小樽のおすし屋さんに訪れた私の知り合いが「やっぱり小樽はすしがうまい」と感動していた。しかしマーケット調査したところ、その有名な小樽のすし屋さんの約70%以上が輸入もののネタだった。多くの人がロシアのウニやカニ、ノルウェーのサーモンなどを北海道のものと思って食べていることがわかった。
 近港で上がった魚は、ほとんど付加価値がつかないまま東京の築地へ行き、小樽の飲食店では世界各地から輸入されてきている安い魚を中心に消費者に提供しているのである。

 

 青森県もほぼ類似した構図にある。それではなぜ地産地加地消が進まないのか?
 まずはコストである。飲食店にとってみれば、食材原価比率が30%か40%かでは天国と地獄くらいの差がある。しかし、同種の食材では青森県産品は輸入物に比べてはるかに高価だ。しかも生産者から直接仕入れる場合は、別途の送料もばかにならない。そのコスト高を補うほどの付加価値を消費者に理解してもらい、選んでいただかないと割が合わないのである。
 私のお店ではメニューに食材のウンチクをのせて青森の食材のすばらしさを伝える工夫をしているが、お店の取り組みだけでは限界である。また生産者の中には直接取引が慣れてないため、納期を守るという基本的商慣行ができていない場合も多い。
 こうしたことを解決するためには、地産地消を促進させる中間支援組織のようなものをつくり、共同仕入れ、流通、認証などをしていくというのも一つの方策だろう。
 そしてもう一つ、舌の教育を是非進めてほしい。以前私のお店で、大間の一本釣り本マグロとインドマグロのトロ食べ比べというメニューを出した。どちらかわからないように伏せて食べてもらったところ、残念ながら十人中九人がインドマグロをおいしいと選んだ。
 しかし脂分だけでない大間の本マグロのおいしさを説明し、比較して食べていただくようにすると、それ以降逆に大半が大間の本マグロをおいしいと感じていただけるようになった。
 ジャンクフードに慣れた我々は、脂分や化学調味料の影響を受け微妙なマグロ本来の味などを感じられない傾向が強くなってきている。青森の世界一、日本一を味わうには私たちがそれにふさわしい舌をつくっていくことが長い目で必要なことなのである。


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