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2005-02-26 18:25:00

『4x4MAGAZINE』 3月号 平成16年(2005年)2月26日

「燃料電池」をキーワードにディーゼルの必要性を考える

インタビューの冒頭で、金谷氏はディーゼルエンジンの未来について、 「エネルギーの有効利用という面から考えると、ディーゼルはとても大切な技術です。今後30年以上の将来にに亘って、不可欠な存在であり続けるでしょう」と明言された。氏は、様々な分野で、研究活動や提言をされている多忙な方だが、ディーゼルに関しては、主に「環境」や「エネルギー政策」の面から深く関わっておられる。ただし、単にディーゼル限った話ではなく、我々が生活する上で必要な「エネルギー」の使い方を、「地球」という広い視野から考えるのが氏のスタンス。クルマに関してはガソリンや軽油、天然ガス、バイオマス、DME(ジメチルエーテル)といった様々な燃料から、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、燃料電池、ハイブリッドシステムといったハードの技術も含め、今後日本がどのようにエネルギーを使っていけばいいのか、を提案されている。

ここで、氏の提案の中心となるキーワードは「燃料電池」(*1)だ。なぜなら、燃料電池はクリーンで環境に優しく、そして効率のいいエネルギーシステムとして、クルマ社会でも中心的な役割を果たすことが確実視されているからだ。ではいったいディーゼルエンジンの必要性はどこにあるのだろう。それについては、「来る燃料電池の時代までに、世界に存在するエネルギー源を効率的に利用する手段として、最も実用的で優れているのがディーゼルだから」と言う。水素を利用する燃料電池は、コストや安全性、インフラなど、解決すべき問題も多く、誰もがそのエネルギーを自由に利用できるまでに、まだ多くの時間が必要なのだ。その点ディーゼルは軽油だけでなく、家庭からの廃油や、DME(*2)なども利用でき、多様な燃料に出揮毫できるシステムである上に、熱効率もいい。そして、ハイブリッド技術と組み合わせ、「ディーゼル・ハイブリッド」とすることで、プリウス等のガソリンハイブリッドエンジンを凌ぐ燃費が得られるようになると言う。しかし、今の日本の状態では、ディーゼルというだけで拒否反応を示す人が大勢いる。

ディーゼルの未来を語ると同時にその評価も正しいものとするべきだ

「ディーゼルは、今日本で異常なくらい低い評価を受けています。確かに、これまで受け皿としての不備はありました。例えば、NOxの規制値だけに偏り、PMの規制をないがしろにしていた古い排ガス規制です。また、住宅地のすぐ近くを大型トラックが通過するような都市構造や、常に渋滞を生むような交通政策なそ、反省すべきことはたくさんあります。そして、その当時のディーゼルエンジンの排ガスが実際に汚く、多くの被害者を出してしまったことも、明確に反省すべきことです。しかし、だから『ディーゼルを閉め出せ』と言って済むほど問題は単純ではありません。子育てを考えてみてください。きちんとした食を与えれば、子供はしっかり成長します。ところが、食べ物は悪い、まわりの大人も悪いという状況の中、不良になった子供を、『出ていけ』と閉め出すだけで本当の解決になるでしょうか?ディーゼルの問題も同じです。もとはと言えば、燃料が悪く、法規制も甘く、パワーだけを求められ整備不良でも平気で走らせる人が大勢いたから糾弾されたのです。私は国のNOx・PM規制も、石原都知事のディーゼルNO作戦に関しても生活環境の保護という面で評価されるべきだと思います。ただ、ユーザーの多くが『ディーゼルが悪玉』の意識を持ってしまったことに、将来的な問題を感じます。多くの方は、ディーゼルのことを『汚い、うるさい、遅い』うえに所有することが『よくない』と感じているでしょう。しかしそれは、10年前のディーゼルのイメージを持ったまま時を止めてしまったようなものです。現在のディーゼルは、ここ10年の技術革新によって、とてもクリーンになりました。NOxもPMの排出量もガソリンエンジン並みになり、地球温暖化の元凶となるCO2の排出量は、ガソリンエンジンよりずっと少ないのです。私は、最新のディーゼルはもう、人間の健康にほとんど影響を及ぼさなくなっている、と判断しています。そうやってディーゼルの実力を冷静に評価すると、実は忌むべき悪玉ではなく、近未来のクルマ社会の中で、とても重要な役割を果たすエンジンであることが見えてきます。先ほども述べた『ディーゼル・ハイブリッド』は、ここ10年15年で、間違いなくエルネギー効率のトップランナーとなるでしょう」

 

このクリーンなディーゼルが将来果たすべき役割は何か?
「世界の石油埋蔵量はあと30年とも言われていますが、ご存じのように、石油からガソリンを精製する過程で軽油は必ず生まれます。ですから、今の日本のように、ガソリンだけを消費し続けるわけにはいきません。また、ガソリンは水素のキャリアとなるため、より効率的なエネルギー利用法として、燃料電池用へとスムーズに移行していくはずですが、軽油や重油はディーゼルエンジンでしか使えません。では、ガソリンと軽油を両方効率的に利用するにはどうしたらいいのか…。実は、いいシナリオがあります。それは、燃料電池への過渡期に、ディーゼル・ハイブリッド車を幅広く活躍させていくことです。つまりディーゼルは、ガソリンエンジンが消滅した後も、必要な技術であり続けるのです。そのためには、今後ユーザーの意識改革を含めた、行政側の働きかけが不可欠でしょう。国のエネルギー政策として、もっと骨太に国家戦略の中に組み込まれるべきことだと思います。もちろん、ディーゼルを正しく評価して、それをユーザーに伝えるという努力も必要でしょう。


(*1)燃料電池
水の電気分解とは逆のプロセスで、水素を燃料とし、空気中の酵素と化学反応させることで発電する装置のこと。燃やさずに電気エネルギーを取り出すため、エネルギー変換にともなう損失が少ない。化石化燃料を使う内燃機関と異なり、排出物は水だけで、CO2もNOxも硫黄酸化物も一切排出しない。

(*2)DME(ジメチルエーテル)
天然ガス、石炭ガス化ガス、バイオマスなどを減量として製造することが可能な次世代の燃料。硫黄を含まず、セタン価が高くPM(粒子状物質)を全く排出しない点で優れたディーゼルエンジン燃料と言われている。ちなみに、DMEディーゼル自動車は既存のディーゼル車の燃料供給系の改造が必要


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