新着情報

2004-04-30 13:43:00

NEW ENERGY 2004年4月号

クローズアップ21
燃料電池の本格的普及のための鍵は?

家庭用燃料電池の発売が、いよいよ秒読み段階に入った。環境対応としても、日本経済の活性化のためにも期待が高まるが、早急に解決しなければならない課題も残っている。

家庭用燃料田地いよいよ発売へ

 熱料電池といえば、リン酸型燃料電池がすでに世界中で実用化され、工場を中心として数百台導入されているが、昨今大きな注目を集めているのは個体高分子型燃料電池である。現在、世界でもっとも高熱度出力のものでは400ミリリットルで1kWの出力をだせるまでに至っているからだ。

 これによって自動車用から家庭用、さらには携帯電話やパソコンなど非常に広範囲にわたる用途が期待されるようになり、さらに量産化によるコスト削減効果がきわめて大きくなることが見えてきた。たとえば、これまで火力発電では kWあたり15~20万円程度、太陽光発電だと60万円だったのに対し、燃料電池の場合はーーもし自動車用として年間10万代以上量産化できるようになればーー1万円を切ってくるという計算がなされている。2020年までに日本国内だけでも累計100兆円の燃料電池関連の新規マーケットが創出されると見積もられており(副大臣会議「燃料電池プロジェクトチーム」報告書)、日本経済再生のためのコアテクノロジーとしても大きな期待を集めるようになっている。

 燃料電池自動車はいち早く商品かされ、すでにリースによる販売が開始されているが、水素ステーションなどの整備をはじめ後述するように解決しなければならない課題も多く、本格的な普及は2010年をすぎてからになると見込まれている。それに比べて先に普及する可能性があるのは家庭用燃料電池である。

 現在、家庭用燃料電池は2005年度内の実用化・商品化をめざして松下電器産業、三洋電器、東芝、荏原バラード、三菱重工業といった国内外のメーカー十数社がしのぎを削っている。すでに日本各地で経済産業省の補助を得た実証試験が実施されており、最終的な実用化への課題抽出が行われている。また、東京ガス、大阪ガスなどのガズ会社では、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの普及体制を整えるためにメーカーの選定に入っており、いよいよ来年発売というところまでこぎつけた。

商品化間近の家庭用燃料電池は、エアコンの室外機くらいの大きさの燃料電池システム本体と貯湯器からなる。これが1家に1台取りつけられると、その家の電気を燃料電池でまかなうだけでなく排熱でつくられたお湯を給湯や暖房(床暖房などのシステム)でも活用できる。各家庭の光熱費は年間3万円~5万円程度削減となるだろう。

 特に北日本など寒い地域では熱を有効活用できるため、光熱費の削減効果が大きい。雪の多い地域では排熱融雪にも使えるメリットがさらに大きくなる。また、2~3世帯で住む大人数の家族のようにお湯を比較的多く使う家庭の方が、一人暮らしや夫婦だけの世帯に比べて燃料電池導入のメリットが大きい。

 さらに排熱の使い方を工夫し、夏の除湿空調に利用するための技術開発もすでに実正段階に入っている。梅雨の季節や夏の除湿が排熱で可能になれば、冷房のかかる費用を節約できるだけでなく、住宅のカビ、ダニの発生を防ぎアトピー性皮膚炎の暖和にも貢献できるなど、様々なメリットを享受することになろう。

燃料電池普及の鍵を握る「水素インフラ」と「エネルギー特区」
 燃料電池の燃料である水素は、インフラの整っている天然ガスやLPガス、灯油などから取り出すことが想定されているが、この場合、地球温暖化の元凶である CO2を従来よりも20%~30%少なくはなるものの、やはり排出してしまう。従って中長期的には太陽光や風力、バイオマスといった再生可能エネルギーで水素を作ることが望ましい。

 そのなかで、最近特に注目されているのは、バイオマスから高効率で水素を取り出す技術である。こうした技術として有望な「炭化熱分解炉」「超臨海水」「水素発酵」などは、すでに実用化されている「メタン発酵」などに比べて小規模かつバイオマス重量あたり3~5倍ときわめて大きなエネルギー利用効率が可能である。燃料電池が普及し、水素エネルギーの需要が出てくれば、こうした技術でバイオマス活用が一気に進むだろう。

 ただし、実用化のためには、現状の廃棄物関連の規制の暖和が不可欠だ。さらにつくった水素をどのように供給するかといったインフラ整備も課題である。現在、関係省庁連絡会議では2005年の家庭用燃料電池の商品化までに、現行法での燃料田地導入に弊害がある規制を暖和するための準備に入っている。これによってボイラー主任技術者をおくことや窒素パージの義務づけなどをはじめ消防法、電気事業法、建築基準法、高圧ガス保安法などの産業界から要望された検討項目についての規制が暖和される予定だ。

 しかし、定置型燃料電池普及への大きな障害は、燃料電池の余剰電力の売電価格の問題だ。定置型燃料電池の余剰電力の売電価格がきわめて低く設定されると想定されるが、電気を余らせない運転だと燃料電池コージェネレーションによる光熱費削減効果が小さくなる。これでは、メリットの出る家庭が著しく少なくなってしまう。

 これに関しては、コミュニティで分散型電源をネットワーク化してマネジメントし、電気を各需要家間で融通できるシステムにすれば、コミュニティ全体として光熱費削減効果が大きくなるという趣味レーション結果が示されている。しかしながら、現状はこうした分散型電源のネットワーク化を視野に入れた、送配電網の解決や再構築といった議論までには至っていない。

 ただ、2003年に入って新たな動きも出てきた。内閣府が法制化した地域だけ国とは規制枠組を変えるという構造改革特区として、青森県などいくつかの地方自治体がエネルギー規制暖和の特区として認定されたことだ。今後、これらの特区構想では、電力自由化の先行実験として分酸型電源ネットワーク化の実証試験を行ったり、実際にビジネス展開が可能となるような規制暖和を実施することになる。こうした特区構想の実現のなかで燃料電池の有効性が実証されれば、燃料電池普及により大きなはずみがつくだろう。

 燃料電池・水素エネルギー社会を絵にかいた餅にしないために、こうした国のトップのリーダーシップこそが求められているのである。

 


1