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2003-09-29 13:47:00

『日経ビジネス』 平成15年(2003年)9月29日

昨年12月にトヨタ自動車とホンダが究極のエコカーとされる燃料電池自動車を政府に納め、世界で初めての実用化となった。水素をエネルギーとする燃料電池の用途はいろいろある中で、最も技術的なハードルが高い自動車での利用が始まっている。

 化石燃料に代わる将来のエネルギーとして期待を集める燃料電池は、資源小国の日本にとって大きな可能性を秘めている。その可能性を引き出すためには、政府が財政支援も含め、水素立国への道標をもっと明確に示す必要があるのではないか。

水素ステーション建設支援を

 環境負荷の低減という点では、自動車の動力源に燃料電池を活用すれば大きな効果が得られる。一般ユーザーに普及するには、さらなる技術革新、製造コストの大幅低減といった課題と同時に、燃料の水素を供給するインフラをどう整えるかという難題がある。

 私の見るところ、自動車側の課題は2010年ぐらいまでに解決できる。そうすると残るのは水素インフラだ。政府の予想では、2020年に国内で500万台の燃料電池車が走っているとしている。その予想通りにいくかどうかは政府の政策にかかっているだろう。

 燃料電池車の本格実用化に向け、国は自動車メーカーが参加した実証実験を進めている。これはこれで結構なことだ。水素供給インフラについても財源を視野に入れた具体的な計画を作り始める時期に来ている。

 車の普及と水素供給インフラの整備は、ニワトリが先か卵が先かという議論になる。どちらか一方だけが広がるということはあり得ない。

 車の方は自動車メーカーが競争して開発を進めている。しかし、インフラとなる水素ステーションについては、少なくとも今のところ自腹を切って事業をやろうという人はいない。自動車メーカーにすれば、ステーションがないのに量産などできるはずがない。量産できなければコストは下がらない。だから、官の後押しが必要なのだ。

 普及段階に入ったと仮定しても、水素ステーションの建設には1.5億~2億円くらいの投資が必要になると試算されている。今のガソリンスタンドの1.5~2倍ぐらいかかる。それだけのお金をかけて採算が合うのかと言ったら、そんな保証はない。

 そこで、例えば国や自治体が建設費を無利子で貸し出し、5年間は返済を猶予するといったような支援が必要になる。これはあくまで一例だが、そうでもしない限り、収益が上がらないうちに水素ステーションを作ろうという人は出てこないのではないか。

 2020年に燃料電池車が500万台になるには、約4000カ所の水素ステーションが必要だと言われている。仮に1カ所当たり2億円の建設費とすると、8000億円かかる。10年間かけて作るとしたら、1年当たり800億円となる。カネがかかる日本の公共事業に比べ、ほんのわずかな金額だ。金融機関に投じた公的資金に比べても微々たるものだろう。その半分を補助したとしても、それほど大きな金額ではない。

日本が主導権を握れる分野

 しかも、現在の公共事業の受注者である建設会社にとっても悪い話ではない。水素ステーションの建設費のうちプラントにかかるのは数千万円で、それ以外は施工費だ。つまり、建設会社に支払われる。どの役所を通るかが違うに過ぎない。

 米国も国家戦略として水素エネルギーの活用に力を入れている。莫大な公共事業費があるという意味で、日本が本気になれば主導権を握れる分野だ。硬直化した日本の縦割り行政の中で、水素エネルギーの将来に重点的に予算をつけることは難しいかもしれない。だが、様々な波及効果が期待できるこうした分野にこそ、積極的に資金を投じるべきではないか。

「車だけではない。パイプライン網を作れば、家庭用エネルギーとなる水素も供給できる」。水素ステーション整備のメリットは大きいと説く。


2003-09-20 13:48:00

『毎日新聞』 平成15年(2003年)9月20日

◇「地産地消」モットーに--慶応義塾大大学院助教授・金谷年展さん(41)

今、注目を集めている燃料電池の専門家だ。しかし、技術の研究者ではなく、特許取得の支援、環境エネルギー政策の立案や行政への売り込みを専門としている。

この夏、問題になった電力問題については、「原子力や化石燃料、自然エネルギーのそれぞれと水素が組み合わさることで、最適エネルギー社会が実現する。将来は原子力も有望な水素源」が持論である。

これと並行して、燃料電池を家庭に置き、自宅の電源をまかなうことも重要だ。「燃料電池の実用化は技術的には、もう目前に迫っている」という。

「最近、やっと国も循環型社会に向けて、動き出した」。しかし、持論を唱えているだけでは社会は変わらない。循環型社会を身をもって実践するために、厳選された素材を使ったラーメン屋「金太郎」を仙台と青森に開店させた。

地元で作ったものを地元で消費する「地産地消」がモットーだ。農林水産業を助け、エネルギーやコストの削減になり、「お金や物がその土地で循環する」。

自身も味を研究した。「油と化学調味料がたくさん入っているものがうまいと、みんな思い込んでいる。本当のコクを提供し違いが分かる舌を鍛えてほしい」

素材がいいだけに原価は高いが、薄利多売で商売として成り立つ。農家を何回も訪ねて野菜を出荷してもらったり、経営を勉強したりして、努力も重ねてきた。

「この店が30年先にも繁盛していなければ、この発想の正しさを証明できない。だから、この店を失敗することはできないんだ」

昨年、さらに大衆料理を出す「仙台食堂」を開店させた。こちらも好評だ。今月末には故郷・札幌に「北海道食堂」を開店させる。

どこまで本気か。自分の舌で確かめてほしい。


2003-09-09 13:49:00

●『毎日エコノミスト』  平成15年(2003年)9月9日

燃料電池・水素エネルギー利用の課題

100兆円規模の新規マーケット創出が期待される水素エネルギー社会。しかし、規制緩和やインフラ整備など解決すべき課題は多い。

2002年12月、トヨタとホンダが世界で初めて燃料電池自動車を政府に納入した。家庭用燃料電池やパソコン、携帯電話用の燃料電池も05年度中をメドに実用化される見込みで、いよいよ燃料電池・水素エネルギー社会の入口にさしかかってきた。

経済産業省の試算では、燃料電池自動車は2010年に5万台、20年に500万台、定置型燃料電池は10年に210万キロワット、20年に1000万キロワットに達すると予測しており、20年までに燃料電池関連で累計100兆円の新規マーケットの創出が見込まれている。

現在、まさに燃料電池商品化へ向けたメーカーの開発競争が激化しており、数年内に勝ち組みは絞られてくると考えられる。しかし一方で燃料電池の実用化、商品化には技術的課題も山積している。燃料電池自動車は、低温での作動性や航続距離の問題、定置型燃料電池は耐久性などが、まだ解決されていない。コスト面でも自動車で2ケタ、定置型で1ケタ下げなければならないのだ。だが、個々の企業が解決すべき課題については、私はある程度楽観視している。ここ4~5年、多くの燃料電池メーカーや関連企業と継続的にそうした課題を検討していると、それらの8割以上が予想より早く目標の水準に到達しているからだ。

インフラ整備が急務

企業の開発投資意欲が鈍ることがない限り、燃料電池が商品として市場に受け入れられる品質水準に達するのは遠くないだろう。それより私が燃料電池普及を大きく左右すると考えるのは、水素インフラと余剰電力の売電価格の二つの問題である。これらは、民間だけで解決できる問題ではなく、政府の役割が非常に大きいものだ。

水素インフラの整備については、政府は今年度、首都圏に複数の方式で6カ所の水素ステーションを建設中だが、普及に向け、より具体的な施策や方針を打ち出していく必要がある。というのも、燃料電池自動車普及における、水素ステーションと燃料電池自動車量産化の関係は「にわとりが先か卵が先か」のようなものだからだ。水素ステーションが増えなければ、燃料電池自動車は量産化されない。量産化されなければ、採算面から水素ステーションはつくれないというジレンマがある。

さらに問題なのは、水素ステーションで供給する水素の製造や調達をどうするのかということだ。天然ガス、ナフサ、灯油、LPガス、DME(ジメチルエーテル)、太陽光による水電解など様々な方式が考えられる。そのなかで最も期待が高いのは、供給量や改質の容易な天然ガスだが、現在、日本には天然ガスの幹線パイプラインがない。パイプラインが整備されれば、天然ガスを低コストで調達できるようになり、水素製造コストも安くなる。こうした諸インフラを整えていけば、一気に燃料電池普及を後押しすることになる。

もう一つの燃料電池普及への大きな障壁は、定置型燃料電池の余剰電力の売電価格の問題だ。定置型燃料電池の余剰電力の売電価格が極めて低く設定されると想定されるが、電気を余らせない運転だと燃料電池コージェネレーションによる光熱費削減効果が小さくなる。これでは、メリットの出る家庭が著しく少なくなってしまう。

これに関しては、コミュニティーで分散型電源をネットワーク化してマネジメントし、電気を各需要家間で融通できるシステムにすれば、コミュニティー全体として光熱費削減効果が大きくなるというシミュレーション結果が示されている。しかしながら、現状は、こうした分散型電源のネットワーク化を視野に入れた送配電網の開放や再構築といった議論にまでは、至っていない。

ただし、今年に入って新たな動きも出てきた。内閣府が法制化した地域だけ国とは規制の枠組みを変えるという構造改革特区として、青森県などいくつかの地方自治体がエネルギー規制緩和の特区として認定されたことだ。今後、これらの特区構想では、電力自由化の先行実験として分散型電源のネットワーク化の実証試験を行ったり、実際にビジネス展開が可能となるような規制緩和を実施することになる。こうした特区構想の実現の中で、燃料電池の有効性が実証されれば、燃料電池普及により大きなはずみがつくだろう。

ここにきて国土交通省内でも、道路や港湾、ダムなど公共投資の枠組みに「水素インフラ」という、未来の産業を拓き、環境問題の解決につながるインフラ投資を入れていくという議論も出始めているという。燃料電池の普及が政府の目標値を上回るか下回るか、それはまさに政府の対応にかかっている。


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