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2002-03-19 13:59:00

『河北新報社』平成14年(2002年)3月19日

あるニューヨークのビジネスマンに聞いた。

「あなたが使っている電気はどこから来るのですか?」。すると彼は「それはスイッチからさ」と答えた。

次に「あなたが食べている果物はどこから来るのですか?」と聞くと、「スーパーマーケットからさ」と答えた。

「それではあなたの捨てたごみはどこへ行くのですか」と聞くと、「それはごみ箱さ」と答えた。

この問いに正しく答えられることこそが環境問題解決の第一歩である-。

これはバイオリージョン(生命地域主義)という言葉を生み出したプラネットドラム財団理事のピーターバーグ氏が、いつも話すエピソードである。

生命地域主義とは、地域で生産されたものを地域で消費する、いわゆる地産地消と類似した考え方ではあるが、それに加えて地域に愛着のある人々が地域の資源に最大限の付加価値を与えることによって、環境を守りながら地域も経済的に自立を目指していくという概念も含まれる。

少し難しいので事例を紹介しよう。生命地域主義を語るときによく引き合い出される企業として、北海道の住宅メーカー「木の城たいせつ社」がある。

同社は北海道産の木材、土、石といった地域資源でほとんどが造られる住宅を年間五百棟以上、道内に限って供給している。日本の木材の自給率は約20%に落ちこみ、そのために日本の森林は放置され、荒廃してきている状況で国産材の活用は至上命題となっているが、それと経済性との両立を成功させたのだ。

同社は構造材のみならず、造作材や建具、家具まで住宅のほとんどすべてを道内産素材を使って自社で生産している。しかも、素材加工から木材乾燥、建材の加工、施工まですべての過程を一貫して行う。

注目されるのは、使用される木材の歩留まりの良さだ。普通は捨ててしまうか、ただ同然のパルプ材になるしかなかった小さな木片や、一般では活用法のない小径木、間伐材を、集成加工し、はりやベニヤ代替板、手すり、いすや机などに生まれ変わらせている。

それでも残ってしまうようなおがくずは木材乾燥用ボイラーの燃料として使われ、そのボイラー廃熱は暖房や給湯に使う。加えて、道産材から接着剤や塗料の開発、おがくずから断熱材の開発も行うという生命地域主義への徹底ぶりだ。

 「青森でこそ本物の大間の本マグロにこだわったおいしい料理を」。そんな思いから、北海道の函館で長年地域の素材にこだわる料理人として知られた高野哲郎さんが、最近、青森市内に料理店を開いた。

大間の本マグロと青森県産長芋のカルパッチョ、大間マグロのネギトロサラダ、田子みそニンニクガーリックトースト…。高野さんの店では、青森県大間町に水揚げされたマグロを中心に県内産食材にこだわったフルコースの創作料理を食べることができる。近々、仙台のあるレストランでも、アンテナショップ的にこれらのメニューを出して青森県内産食材をPRするそうだ。

私も青森に来て三年になるが、県外からの客を連れていける、県内産の食材にこだわっておいしい料理を食べさせようとしている料理店が少ないと感じていた。ある温泉旅館に泊まったときも、夕食には、ウナギや輸入シシャモ、エビのてんぷらなど、県内産の食材はほとんどなかった。

大間の高級本マグロは、テレビなどで取り上げられて全国的に有名になったが、大半は東京の有名すし店などへ行ってしまうため、県内ではなかなか食べることができなかった。今後の地域の経済的自立を考えると、素材だけを東京に出すのではなく、地域で高い付加価値を与え、最終的に消費者に届くまで面倒を見る「木の城たいせつ型」のビジネスへの転換こそが、まず望まれるだろう。

「青森県産の食材は、マグロにしろニンニクにしろ最高級品。それを県外に出さずにその良さを最大限に引き出して東京にない料理を出せば、東京の人だってそれを食べるためにわざわざ青森へ足を運んできてくれるはずです」

高野さんは力を込めた。


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