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2002-02-22 14:01:00

『河北新報社』平成14年(2002年)2月22日

 「日本のマンションは、スウェーデンでは憲法違反です」

こんな衝撃的な話を聞いたのは、三年前に建築物の省エネルギーに関する調査のためにスウェーデンに行ったときのこと。建築物理学の第一人者であるルンド大学のアーネ・エルムロート教授が、日本のマンションのほとんどがコンクリート駆体(建物の基礎である柱、壁など)の内側にウレタンなどの断熱材を吹き付ける内断熱工法であることを指して語ったものである。

日本とは対照的に、スウェーデンやドイツなどの欧米の環境先進国では、一九七〇年台のオイルショック以降、新築のコンクリート建築物で内断熱は全く見当たらない。コンクリート駆体の外側をすっぽりと断熱材で覆ってしまう外断熱が一般的なのだ。

それはなぜか。スウェーデンやドイツでは、オイルショックを受けて省エネルギー建築物について国を挙げて審議した結果、以下に挙げる三つの重大な内断熱の問題点が明らかになったからである。

一つは、構造上断熱材が途切れてしまう部分が多くできるため、エネルギーを浪費すること(外断熱に比べ15-35%程度)。二つ目は、駆体が外気温に左右されるため膨張収縮を繰り返し、ひびが入りやすくなり建築物の寿命を著しく短くすること(外断熱に比べ五分の一-三分の一)。そして三つ目は、冬に壁や床などに温度の低い部分ができるため結露しやすく、アレルギーなどの原因でもあるダニ、カビが繁殖しやすくなることだ。

外断熱が当たり前となったスウェーデンの憲法第二条には、行政が果たすべき義務の中に「よい住環境」と明記されており、これが、冒頭の言葉につながったのである。

それなのに、なぜ日本では内断熱のコンクリート建築物が一般的なのか、不思議に思われる方もいらっしゃるだろう。確かに日本でも一部の研究者らからは、外断熱の有効性が指摘されてはいた。しかし、当時はまだ環境や健康を配慮した建築物への意識が低かったのに加え、外断熱は内断熱よりもコストが高かった。

加えて地震国の日本では、耐震性を強化するために駆体と断熱材の間に金具を入れる必要があり、それがコストを押し上げることになったため、供給側もおのずと内断熱へと傾斜していった。加えて消費者側も、目に見えない断熱工法よりは、目には見えるエントランスなどにお金をかけた方を好んで選択してきた。

「悪いと思ったらすぐに改めなさい」

私が子供のころ、母が口ぐせのように言っていた。

一昨年、国会でもようやくこの内断熱・外断熱問題に関する質問が出され、首相答弁書の中ではっきりと環境や省エネルギーなどの面から外断熱の有効性が示された。一方、青森県では去年、地球温暖化防止対策の目玉の一つとして、この断熱の問題を位置づけ、公共建築物の外断熱化について見当が始められた。

地球温暖化、建築廃棄物、住宅建材などに含まれる化学物質が体調不良などを引き起こすシックハウス症候群への対応は待ったなしであるが、外断熱がこうした問題への明確な回答であることが分かった今こそ、マンションなどのコンクリート建築物を内断熱から外断熱へ大転換すべきときであろう。

だが残念ながら、いまだに業界や専門家の中には「リゾートマンションのような年間を通して利用しないような建築物では、外断熱の方がエネルギーの浪費になる」として、内断熱でも構わないと主張する人も多い。

こうした少数の例を盾に、生活者や子孫たちの健康や環境、そして財産を差し置いて、自分たちの目先の利益や立場を守ろうとするのはいかがなものか。内断熱による犠牲者は一体、だれなのか。その犠牲は本当に払うべきものなのか。一度、問い直してほしい。


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