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2002-05-24 13:57:00

『河北新報社』平成14年(2002年)5月24日

「いかに地域ぐるみで本気で取り組む志があるかが決め手になります」

これは先日、小泉純一郎首相が議長を務める内閣府の「経済財政諮問会議」公式ヒアリングの席上、私が「特区」が認められる条件について尋ねた際、同会議議員である吉川洋東大経済学部教授が答えたものだ。

現在、国では自治体主導の活性化策として、特定地域に限った規制緩和や優遇税制などを行う「構造改革特区」を検討中だ。これを受けて全国の少なからぬ自治体では、この「特区」の指定を受けようと準備を始めている。

例えば北海道ではポストゲノム研究とその技術の産業化を促進させるために、大学教員の企業役員兼業に関する規制緩和や外国人のバイオ研究者のビザ発給要件の緩和などを行う「バイオ研究特区」、さらに農業生産法人の参入要件の緩和や農地転用規制を緩和して農業の活性化を図る「農企業創生特区」を創設する構想を打ち出している。

青森県でも、五月に構造改革特区の構想をとりまとめるための検討委員会がスタートした。六月中にも内容を固める方針だが、その目玉はやはり「エネルギー特区」であろう。

国レベルでもエネルギーの全面的な小売自由化の方針は固まってきているが、肝心の送・配電網の分離・開放については先送りとなった。エネルギービジネスで新たに創出されるマーケットは数十兆円ともいわれているが、この送・配電部分の規制緩和がないと、エネルギービジネスも絵に描いたもちになりかねない。

そこで青森県では、国に先駆けて送・配電網の分離と開放を実施し、誰もがその送・配電網を利用してビジネスを展開できるようにする。これによって例えば、コミュニティー内で電気が融通できるようになれば、世界中のエネルギービジネスを展開しようとしている企業が、この地に進出してくるだろう。

しかし、特区を設ける意義は、ある地域を特別扱いするということではない。ある地域が日本や世界に貢献するために、改革のフロンティアとしての志を抱いてリスクを負い、先駆的な実証試験の場を提供するということなのだ。しかも一部行政担当者だけでなく、地域住民の同意も併せて求められている。これが、冒頭の吉川教授の発言につながっているのである。

国が挙げている特区の構想例には「IT(情報技術)関連産業集積特区」「港湾のリサイクル産業を中心とする産業再生特区」「自然ふれあい体験特区」などがある。各地域、各自治体で住民もしっかりと参加して知恵を出し合い、その地域に最もふさわしい「特区」を描いてみることは地域の独自性確立への良いきっかけになるだろう。

私にも一つ提案したい特区構想がある。それは「官民人材流通促進特区」、ちょっと長いので通称「公務員特区」とでもしよう。

それは地方公務員法にある兼業に関する規制を大幅に見直すもので、県市町村の職員の中に”二分の一”公務員と”十分の一”公務員をつくる。例えば”二分の一”公務員は、週の半分を公務員として仕事をこなし、残りの時間でベンチャーを興したり、企業で仕事をしたりと民間のビジネスなどに振り向ける。

受・発注などに伴う利害関係に一定のルールを設けることは必要だろうが、人材流通は官民双方の活力につながるだろう。商工関係の部局や経済局などはベンチャーでの成功が出世の条件になるかもしれない。

さらに、”十分の一”公務員は、世界中からその地域が必要とする卓越した才能とノウハウをもった人々になってもらう。そうすれば、審議会などの委員になるよりもずっと愛着と責任をもって地域のために働いてくれるだろう。その結果、公務員の数は二倍になるかもしれないが、一人当たりの人件費削減が期待され、全体としては、財政再建とワークシェアリングが達成できるかもしれない。

最後に詩人・石原吉郎氏の言葉を紹介したい。

「ひざを組み替えるだけで変わる思考がある。それを知るために生きてきたのではなかったのか、私たちは」