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2003-07-05 13:53:00

『熱産業経済新聞』平成15年(2003年)7月5日

「分散型電源」普及の起爆剤にエネルギー特区制度 ネットワーク化で新スキーム

 昨年十二月、トヨタとホンダが世界で初めて燃料電池自動車を政府に納入した。また家庭用燃料電池やパソコン、携帯電話用の燃料電池も二〇〇五年度中をメドに実用化される見込みとなっており、いよいよ燃料電池・水素エネルギー社会の入口にさしかかってきた。経済産業省の試算では、定置型燃料電池は二〇一〇年に二百十万キロワット、二〇二〇年に一千万キロワットに達するという予測をしており、これから二十年の間にこの燃料電池が分散型電源普及の起爆剤となっていくであろうと見込まれる。

現在はまさに、家庭用の燃料電池の商品化へ向けたメーカー間の開発競争が激化しており、数年内に二~三社程度に勝ち組が絞られてくると考えられるが、いずれにせよ二〇〇五年度の商用化時には一キロワットクラスでの登場となる。

これは、現行法上では各家庭での燃料電池の余剰電力は電力会社に売電することになるが、その価格が極めて低く抑えられることが見込まれており、余剰電力を出さない運転が強いられるためである。そうなるとこの第一フェイズの家庭用燃料電池は、その導入によるランニングコストの低減によって初期コストが回収できるような家庭はかなり限られてくるだろう。

しかし、先日、第二フェイズの定置型燃料電池の登場を予感させる、ある重要な出来事が起こった。それは青森県などいくつかの地方自治体が、政府の、特定地域に限って規制を緩和する構造改革特区制度において、エネルギー特区として認定を受けたことだ。

その中で特に重要な特例措置の項目は、「資本関係によらない電力の特定供給事業」である。これは従来、親会社、子会社など資本関係がある場合に限定されていた電力の供給形態を、こうした密接な関係がない場合でも供給可能とする制度である。これによって、コミュニティの中で各家庭や事業所に置いてある燃料電池コージェネレーションをネットワーク化し、電気を最適に融通しあうことができるようになる(図)。

青森県で想定したモデルコミュニティでは、電気を融通し合わないケースの各家庭における従来に比べた省エネルギー率が約二〇%なのに対し、融通し合うケースでは二〇%以上になるという試算がなされており、燃料電池導入メリットが大幅に大きくなる。

この場合、むしろ最適な燃料電池の規格は六キロワット~数十キロワットになり、家庭用というより飲食店などのお湯をたくさん使うような店舗などに燃料電池を置いて周辺の住宅などに電気を供給するといった業務用の燃料電池に大きく需要が生まれてくる可能性がある。

加えて昨今は、固体電解質型や溶融炭酸塩型といった高温型の燃料電池の技術革新も著しい。特に前者はマイクロガスタービンとのハイブリッド化で六〇%を超える発電効率を達成できること、後者はバイオマスの利活用が容易なことなどから急速に注目を集めてきている。

第一フェイズが各家庭や各事業所の点のエネルギーソリューションだったものが、第二フェイズでは固体高分子型や高温型燃料電池をコミュニティの中で最適にネットワーク化していくような面のエネルギーソリューションへと移行していくだろう。この場合、電気や熱といったエネルギーのみならず、地域の廃棄物処理システムも含めたソリューションが求められる。

すなわち、こうしたコミュニティを対象とした面のエネルギーソリューションのノウハウを確立したところがエネルギービジネスを制すると考えられる。こうした動きは、エネルギー特区により針の一穴が開いたことになったが、政府はこうした分散型電源のネットワーク化という新しいエネルギースキームの重要性を認識したうえで、全国的なエネルギー構造改革に着手してほしいと考えている。