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2004-03-30 13:40:00

『東京読売新聞』 平成16年(2004年)3月30日

 

 ◆排出されるのは水だけ
 水素と酸素を使って発電する燃料電池は、省エネルギーと環境対策の切り札として注目されています。身近になりつつある燃料電池について学びましょう。(五十棲忠史)

 受講生の会社員Y宏さん「燃料電池の仕組みと現状を教えてください」
 大手町博士「理科の授業で習った『水の電気分解』を覚えているかな? 電気を使って、水を水素と酸素に分離させるというものだね。燃料電池は、その原理を逆にした。水素と酸素を化学反応させて、電気と熱を取り出す発電システムなんだ。排出されるのは水だけなので、クリーンなエネルギーとして注目されているんだよ」
 慶応大学大学院助教授の金谷年展さん「電池と言っても、電気をためるわけではありません。『水素化学反応装置』と呼ぶ方が現実的です。小さな発電機というイメージです」
 資源エネルギー庁企画官の安藤晴彦さん「燃料電池は、新エネルギーの“希望の星”的な存在です。石油依存度を減らせるだけでなく、新産業の創出も期待でき、場合によっては百兆円の市場になるとの説もあります。燃料電池が普及する上で壁となっている法規制は、二〇〇四年度中に整える予定です」
 Y宏さん「どんな分野で使われるのかな」
 博士「生活に密接にかかわりがあるのは〈1〉燃料電池自動車〈2〉給湯と発電の機能を併せ持つ家庭用(定置用)燃料電池〈3〉パソコンなどの長時間使用が可能になると期待されている携帯用燃料電池――の三つだ」
  資源エネルギー庁の研究会は、二〇二〇年までに期待される目標として、「燃料電池自動車五百万台、家庭用燃料電池千万キロ・ワット」を掲げている。日本の公道上には、すでに、四十八台(うち一台は東京都営バス)の燃料電池自動車が走っている。今後、爆発的に普及するためには、水素を補給する施設の充実が必要不可欠だ。また、家庭用の目標としている千万キロ・ワットという規模は、原子力発電所七―八基分に相当する。

   受講生の主婦K子さん「水素を使うって、もう一つイメージがわかないわ」
 岩谷産業広報・社会関連部の岡田高典さん「水素は、半導体の製造過程など工業用としては、広く使われています。流通しているのは、製鉄所や化学工場などから、副産物として発生する『副生水素』の純度を高めたものです。非常に軽くて拡散しやすい気体で、濃度が濃すぎても薄すぎても燃えない、という性質を持っています」
 金谷さん「家庭用燃料電池に使う水素は、供給網が整っている都市ガスや灯油などを『改質』して取り出そう、という考え方が一般的ですが、この場合、二酸化炭素が発生しています。将来的には生ゴミなどの廃棄物から水素を取り出す方法も期待されています」
  一般に、化石燃料を使って火力発電所で発電する場合、投入したエネルギーの約36%しか、電力として取り出せない。一方、化石燃料から取り出した水素を、家庭用燃料電池のエネルギー源として使う場合、投入したエネルギーの約32%を電力として、約40%を熱として、それぞれ取り出せる。合計すると、火力発電のほぼ倍のエネルギー効率が期待されている。  

 新日本石油FC開発グループの吉田正寛さん「水素と酸素を化学反応させて電気を作ると同時に、反応の際に発生する熱で水道水を温め、約60度の温水を作る家庭用燃料電池を開発中です。今の段階では、高額な上、耐久性にもやや問題があります。効率を向上させて二〇〇五年中には商品化したいと考えています」
 東京ガスのR&D企画部の藤崎亘さん「二〇〇五年初頭の商品化を目指しています。家庭用燃料電池は、家庭で使うすべての電力をまかなえるわけではありません。また、燃料電池をスタートさせる際に、酸素を取り込んだり、水を循環させるための電力が必要となるため、停電時の非常用電源としても使用できません。ただ、技術的には可能なので、研究しています」
  家庭用燃料電池と並んで、身近になりつつあるのが燃料電池自動車だ。燃料電池を使って発電し、モーターを回して走行する。日本勢ではトヨタ自動車とホンダが先行しており、二〇〇二年十二月以降、リースで官公庁や民間企業に限定販売している。

   ホンダ・本田技術研究所の藤本幸人さん「今の段階では車としては一人前ではありません。『氷点下での始動が困難』『航続距離が短い』『コストが高い』――などの課題があります。このうち、氷点下の始動については、技術開発が進み、マイナス20度まで対応可能になりました。航続距離は約三百九十五キロで、ガソリン車に比べると物足りません。コストについても、一台あたり億単位の金額がかかっています」
 博士「開発する人たちに頑張ってもらって、地球に優しい社会が、より早く実現するといいね」